【天の雷・地の咆哮】
「勉強などして、何になるのです?
父上なんて、政もせず遊び呆けているじゃないですか。
狂王の息子が学んだところで、なんの進歩もありませんよ」
「マルス!」
叫んだ瞬間、ヴェローナの右手が空を裂き、マルスの左頬に鋭い痛みが走った。
どんな時でも、笑顔を絶やさず、決して手を挙げたことのない母の初めての怒り。
マルスの蒼い瞳に映るのは、涙を浮かべる母の姿。
「マルス。お父様の事を狂王などと呼ぶのはおやめなさい。
それは無責任な人々が流すいいかげんな噂です。
ロカ様は、とても立派な」
「もういいよ!」
父を庇う母の姿に嫌悪感を感じ、ヴェローナに背を向けた。
母が追ってくる気配はない。