【天の雷・地の咆哮】
正直な自分の気持ちを話して、てっきり批判の声を浴びると思ったのに。
予想に反して嬉しそうなニュクスの意図がわからず、マルスは眉間に皺を刻む。
そんなマルスの態度さえも予期していたように、ニュクスは笑みをこぼした。
「マルス様はね、今、親離れしようとしているのよ。
それはとても自然なことで、誰にでもあることなの。
ほら、鳥だって、巣立つ日が来るでしょう?
あれって、ある日突然飛び立つように見えるけど、そうじゃないのよ。
毎日毎日、巣から出ようと挑戦しては失敗して、ようやく最後に一人で巣を離れるの。
今のマルス様は、ヴェローナ様の庇護を離れようと挑戦中なのよ。
とても素晴らしいことだわ!」
それにね、と言って、ニュクスは嬉しそうにフフ、と声を上げた。
「きちんと育ててもらった恩を感じているマルス様は、とても優しい方だと思いますよ。
きっと、ヴェローナ様がきちんと育てていらっしゃるからね」
ニュクスの笑みは、いつでもマルスの心を自然に解きほぐす効果を持っているらしい。
マルスはしばし、俯いた後、まっすぐにニュクスを見た。
「母上に・・・母上にあやまってきます!」