【天の雷・地の咆哮】
部屋の中はほとんど暗闇で、マルスの表情をうかがい知ることはできない。
それでも、ヴェローナはマルスの気持ちが嬉しくて、思わず胸が熱くなった。
感情的になって手を挙げてしまった事を、ヴェローナはマルス以上に深く後悔していた。
まずは、その事をあやまろう。
そう思って口を開きかける。
一方、マルスはじっと立ち尽くしたまま、口にすべき次の言葉を頭の中で反芻した。
『ごめんなさい』
お互いが、同じ言葉を告げようと唇を動かした時。
突然、真っ黒な空間からぬらりと光る物体が、形を成して現れたかと思うと、
「死ね~!!」
地獄のそこから響くような、男のしゃがれた声が響いた。
「マルス!危ない!!」
刹那のことだった。
マルスは体当たりしたヴェローナに弾き飛ばされ、地面に両手をついた。
「母上!!」
マルスの悲痛な叫びが、闇に霧散した。