【天の雷・地の咆哮】
二人の間を縫うようにして、一瞬、冷えた空気が流れ込んだ。
「それは」
ヴェローナが口を開きかけたちょうどその時、部屋のすぐ外が騒がしくなり、
ニナが部屋の中に駆け込んできた。
「ニュクス様!王子がいらっしゃいました」
ヴェローナはすぐさま跪いて頭を下げ、
ニュクスは、ほっとしたような、残念なような、わけのわからない気持ちになって椅子から立ち上がった。
姿を見せてすぐ、ロカは入り口の隅に控えているヴェローナにちらりと視線をやった。
・・え?今のは、何?
目ざといニュクスの胸が、けたたましく早鐘を打ち始める。
それに気づいたのかどうか、ロカはニュクスの方へと歩み寄った。
「悪かったな、放っておいて」
「いいえ。放っておかれるのには慣れっこですから」
ニュクスは一つ深呼吸してから、いつも通りの返答をした。
ロカの知る、いつも通りの。