【天の雷・地の咆哮】
・・本当に、私に悪いと思っておいでなのかしら。
どうしてだかロカの言葉が、ニュクスには、自分ではない第三者への謝罪に思えてならなかった。
視界の隅にいる小さなヴェローナの姿がちらついて、
ニュクスは心にふたをするように、瞼を閉じた。
視界が暗闇に変わったニュクスの耳に、相変わらずのロカの明るい笑い声が響く。
「あはは。その通りだな。
ニュクスが元気そうで何よりだ。
ところで、折り入って頼みがあるんだが」
ロカが周囲に目配せすると、彼についてきた数人の侍女が会釈して部屋を後にする。
ニュクスもそれにならい、ニナに向かって頷いた。
席をはずせということなのだろう。
ヴェローナも同じようにして背を向けたが、ロカは特段気に留める風でもない。
そのことに、ニュクスはほっと胸をなでおろした。
・・彼女のことではなかったのだわ。