【天の雷・地の咆哮】
「ん?あぁ、いや何でもない」
一瞬、ロカの顔が、険しさを増したように見えた。
ニュクスに感づかれたのが、失敗だったというように。
同時に、開け放たれた窓から、風に運ばれたいくつもの水滴がさあっと室内に侵入する。
窓際に置かれた明かりの火勢が、消えそうなほどに小さく細くなり、
再びもとの強さを取り戻したとき、ロカはすでに普段の彼と同じ仮面をかぶっていた。
「実は夜這いに来たんだ。
忙しくて、まだ一度もあんたと二人きりでゆっくりしたことなかったからな」
まるでそれが目的だったといわんばかりに、ロカはにやにやと唇をゆがめたが、
「何でもないわけないでしょう。早く入って」
ロカの軽口にごまかされず、ニュクスは彼の左腕を取った。
「いや、いい」
「いいからお入りください。すぐに誰か呼びます」
「呼ぶな!」
突然、雷鳴が轟いたように、ロカの鋭い声音がニュクスの胸を貫いた。