【天の雷・地の咆哮】
「でも」
なおも人を呼ぶべきか、ニュクスが逡巡していると、
「なんだ。見物人が欲しいのか?」
ロカがニュクスの腰を取り、息がかかるほどに顔を近づけてきた。
冷やりとした唇がニュクスのそれに触れると、体が自然に強張る。
ロカの体から香る雨と泥の匂いが、ニュクスの鼻腔を優しくくすぐって、ニュクスは頭の中が真っ白になった。
「・・・ロカ。冷たい」
「なら、あんたが暖めてくれ」
艶やかな低い声が、ニュクスの鼓膜を侵し、彼女の心の中へと染み渡っていく。
ロカはいっそう力を込めてニュクスの体を抱くと、引きずるように部屋の中へと入ってきた。
「ニュクス」
まるで初めてロカに名前を呼ばれたかのように、ニュクスの鼓動が速度を上げる。
「ロカ・・・」
再びロカの顔が角度をつけて近寄ったのを見て、
ニュクスはそっと瞳を閉じた。
その時。