【天の雷・地の咆哮】
・・何よ。夜這いに来たって言ったくせに。
雨の中、ぼんやりと輝きを発する月のように、ニュクスの見る景色はにじんで見える。
「ロカの、ばか。
・・・ばか!!」
近くに置いてあった水差しを手に取り、力いっぱい壁にぶつけると、
ガシャンという音とともに、跳ね返ってきた小さな破片がニュクスの頬を切り裂いた。
「っつ!」
鋭い痛みがはしって、ニュクスは頬を押さえる。
頬が痛いのか、それとも胸が痛いせいなのか。
あふれる涙を止める術も知らず、ニュクスは唇を噛み締めた。
・・隣の部屋になどするんじゃなかった。
本来ならニナに与えるべきニュクスとの続き部屋に、ヴェローナを住まわせる提案をしたのは、他ならぬニュクスだ。
心の広さを見せ付けてやる、そんな意地がこうも真逆に作用するなどとは、思いもしなかったが。