【天の雷・地の咆哮】

あと何年、この地獄に耐えればよいのだろう。

そう考えて、ニュクスはそれまで考えまいとしていた不安が、確実に形になるのを感じた。



・・ヴェローナの産んだ子どもが、もしも男だったら。



関係ないと思っていた。

王子を産むのは、自分だと思っていたから。


公式に認められた妃は自分だとしても、別の女が産んだ王子が次の王になることなど珍しくもなんともない。

現にロカは、ネプト王の第何だかわからぬ妃が産んだ王子だ。


『ニュクス。王子の寵愛をいただいて、必ずや立派な男子を産むのだぞ』


両親や親族たちの言葉が、突如彼女の記憶の淵から呼びおこされる。


ニュクスは両手で耳をふさぐと、急いで寝台へともぐりこんだ。

すっかり冷えた体を抱え、赤ん坊のように丸くなって毛布を頭からかぶる。


その夜、涙でぬれたしとねが温まることは、決してなかった--。


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