Chess
もちろんそのルークを取ったら、僕のビショップは次の手でその斜め後ろ、g7のポーンか、g8のナイトに取られるだろう。

僕はビショップはそれほど気に入ってもない。

相手のルークを討てるなら、ビショップで相殺というのも悪くない手だ。

どうせ、素人なのだし。

さあ、彼女はどうするんだ。

ルークを守って動かすのか、それとも……

数秒、盤を見ていた彼女が、手を出した。

ルークへ向かう、そう思ったのに、その右手は盤の中央辺りの駒を摘まんだ。

黒のクイーンの前にあるポーン。

それが一歩前へ、d7からd6へ動く!

なんてこった……彼女は、ルークを逃がさない。

それどころか、ルークを取ったら同じように、僕のh3ルークを取るぞと言ってきている!

まさか彼女は、自分が傷つくのを恐れていない……?

彼女は笑っている。

今度は僕が問われていた。

「さあどうするの?」と。
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