lotlotlot2-ふたつの道-
男は戻ってきた。しかし、もう一人の男はいない。
「あれ、どこに行ったんだ?」
土煙はさっきより、いくらか収まってきている。男は洞窟の中を、蛍灯で照らした。
「おい、中にいるのか?」
すると、人影らしいものが見える。
「何やっているんだ?」
「・・・。」
声をかけた。しかし、返事をしない。
「?」
男の声は洞窟内で反響し、かなりの大きさになっている。気がつかないのはおかしい。そう思った男は、その人影の所まで奥に進んだ。
かなり近づくと、声らしきものがやっと聞こえてきた。
「・・・る・・・な・・・。」
蚊の泣くような声で、何を言っているのかわからない。
「ど、どうした?」
「・・・く・・・る・・・な・・・。」
「・・・?来るな・・・?」
“来るな。”
少なくとも男には、そう聞こえた。

「そうだね。来なければ良かったね。」
男の後ろから声が聞こえてきた。
「誰だ?」
蛍灯を照らすも、後ろには誰もいない。
「ここだよ。」
声は挑発している。
「ど、どこだ?隠れてないで出てこい。」
「やだ。」
声は言った。
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