lotlotlot2-ふたつの道-
声は反響して聞こえない。洞窟の中で声を出せば、必ず反響して聞こえてくるはずだ。その事にやっとリーグは気づいてくれた。
「なんで、早く言ってくれないんだよ。」
「さっきから言ってるじゃないか。」
「もっと、もっと早くだよ。ったく・・・。」
舌打ちをされた。
いつもなら文句のひとつも言うところだけど、今は何よりもおじさんを探す事が先決だ。わだかまりはあるけど、敢えて中に押し込んだ。気持ち悪いものが、体の中で渦を巻くが、今はとにかく我慢だ。
「それよりおじさんを探そう。声が聞こえなくたって、探すことは出来るでしょ。」
「そうだな・・・。」
語気が弱まった。リーグも腹の中に何かを抱えているのだろう。言葉にはまだトゲが残っていた。

突き当たりだ。これ以上奥はない。
「誰もいないね。」
目だけだから、岩と岩の透き間まで探せる。けど、そこにも姿はない。
「あぁ・・・。」
おじさんの姿が見えない現実を、リーグはまだ受け止められないでいる。
「どうする?もしかしたら、おじさんはここにいなかったのかも知れないよ。」
「そんなはずはない。」
「なんで言い切れるのさ。」
「イバーエだって見ただろ、親父の帽子。あれが在ったって事は・・・親父は・・・ここにいたはずなんだ。」
「そうだったのかも知れないけど、今はどこにもいないよ。」
リーグはまた舌打ちした。
「っさいな。いるって言ったら、いるんだよ。」
「だから、どこにさ。」
平行線のまま、僕たちは話さなくなった。
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