lotlotlot2-ふたつの道-
イバーエの祖父はメルツと言う。
村人達は、火事で死んだと思っているが、実際には違う。わわやけけ、その仲間に焼き殺されたのだ。
わわはその記憶を記録していた。
そして、それを村長に移したのだ。

「かっ・・・。」
あまりの熱さに、村長は声を出す事すら出来ない。胸を押さえもがき苦しむ様が、その熱さを物語っていた。
「あいつは、要注意の言術使いだったからね。かなり念入りに燃やしたんだよ。だからさ、熱いだろ?苦しいだろ?」
わわは笑った。
床の上を右に左に、村長は転がる。それを見て、けけも大笑いしている。
「あははは・・・。マヌケ・・・。」
るるんぱも笑っている。
「哀れだね・・・。けけ、もう少し面白くしてよ。」
と言うと、けけは立ち上がり唱えた。
「ダンス。」
指先から、雷が飛ぶ。それが村長の手の平を打ち抜いた。
「ぐえっ、がっ・・・。」
気管も焼け、何か詰まったような声だ。
「いい感じだよ、けけ。もっと、もっと面白くしてくれよ。」
「了解でーす。」
無数の雷が降り注いだ。
三人とも村長しか見ていない。それはズズカ夫人には幸いした。ソファの下に隠れている自分に、誰も気がついていないと本能的に悟った。
<逃げなきゃ・・・。早く、逃げなきゃ・・・。>
目に涙を浮かべ、体が振るえるのを堪えた。
地下室から戻って来た時、きちんと扉を閉めていなかった。そのせいで、ちょうど体が通り抜けられるくらい、扉が開いたままになっている。
<助けて・・・。助けて・・・。>
何がどうなっているのかわからない。ただ、自分にリーグの父を止められないのは明らかだ。こんな時のために、リーグを人質にしたのだ。どんなにひどい人間と思われても構わない。
今は何よりも助かりたい。その一心しかなかった。
ズズカ夫人は駆け出した。
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