lotlotlot2-ふたつの道-
いつも採用されない
「lot。」
いくら言術初心者の僕でも、こんな鍵をはずすくらい何でもない。
カチャリと小さな音が、地下室に響いた。

「僕が言術が使えるって、誰も知らなくて良かったよ。」
「そうだな。口を塞がれてたらいくら言術が使えたって、何も出来ないもんな。」
ここは村長の家だ。作りからして、大声をあげたくらいで、外に聞こえるはずもないし、仮に聞こえたとしても助けに来てくれる人などいないだろう。
まして単なる子供なら、猿轡など必要ない。そう考えてくれたのだろう。
それが幸いした。
「さてと、これからどうする?」
そう言いながら、リーグの意志は決まっていた。
「さっきの音、気になるよな?」
「そう?」
僕は逃げ出す方がいいと思っていた。
「よく考えてみろよ。ここは村長の家だ。で、そこに大きな音がした。って事は、親父が関係している気がしないか?」
「そうかも知れないけど、今、それするのは得策だとは思えないよ。まず一旦引いて、それからの方がいいんじゃない?」
「なんでだよ!イバーエ、お前は気にならないのか?」
「気にはなるけどさ・・・。」
「だったら、なっ?」
半ば強引に押し切られた。
リーグがノブに手をかけた。
ガチャッ。
誰かがドアを開けた。
「やばいっ・・・。」
と言っても、隠れる場所などない。覚悟を決めた。
入ってきたのは、ズズカさんだ。僕たちを見て驚いている。
「な、なんで・・・?」
言い訳なんてしている暇はない。僕は言術を唱えようとした。
「待て、イバーエ。」
「なんで?」
僕にはわからなかった。しかし、長い付き合いのリーグは、ズズカさんの様子がおかしいと瞬時に判断した。
「何かあったんだね?」
ズズカさんは頷いた。
「何があったの?」
「ヨコヤさん・・・ヨコヤさんが・・・。」
「父さんが?」
「大変なんだよ・・・。助けて・・・。」
泣いていた。それを見て、リーグは言った。
「いくぞ、イバーエ。」
階段を駆け上がると、おぞましい光景が広がっていた。
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