lotlotlot2-ふたつの道-
いいんだか、悪いんだか
けけは移動関係の魔法を、いっさい使えない。だから、言術使いの所までは、自分の足で歩くしかなかった。
るるんぱの元から百メートルは離れた。それでもなお視線が痛い。たまらず、けけは走りだした。丘を駆け上がり、そのまま走り続けた。恐怖から逃げる、とてもみっともない姿だった。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
黒ずくめの服は運動に適していない。上品な立ち振る舞いを、強制的に求めてくる。けけはそんな出で立ちを、大人っぽいと気に入っていた。しかし、今日は違う。
ネクタイをしているせいで、首元が汗で濡れる。革靴は草の上では滑るし、そのせいで走りづらい。良い所なしだ。
「なんなんだよ。」
ネクタイに、靴に、当たり散らす。それでもイラつきは解消されない。解消されるとすれば、言術使いを殺した時だけだ。

「誰か来る。」
僕は言った。
リーグとリーグのお父さんらしき魔法使い、朱ずくめの女は一緒にいる。つまり、向かってきているのは、僕を殺したあいつだ。
振るえないようにしようとした。けど、体が言う事をきかない。勝手に激しく振るえ出す。
「大丈夫、イバーエ君?」
「う、う、うん。」
誰が聞いても無理してるとしか思えない。アイワイさんもそう思ったようだ。
「に、逃げよう、イバーエ君。」
「出来ないよ・・・。」
「なんで?怖いんでしょ?」
「怖いよ。怖くて・・・たまらないよ。でも、逃げちゃダメなんだ。そしたら・・・リーグのお父さんを助ける事なんて・・・出来ないから・・・。」
「リーグ君のお父さんを助けるって?」
アイワイには、イバーエの言っている意味がわからなかった。イバーエはかいつまんで、これまでの状況を説明した。
「そんな事って・・・。」
「でも、本当なんだよ。ずっと一緒にいたんだ。その僕が見間違えるわけないよ。あれはリーグのお父さんだ。」
アイワイは頷いた。
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