紅芳記

それから、写経をしたり、経を読んだりと祈っているうちに、夜になりました。

しかし、夢の御方様はご難産らしく、まだまだ御生まれにならないそうです。

私はただただ、御方様と子の無事を祈るのみにございます。

そして、空も白みはじめてきた頃。

城の中に、元気な産声が響きました。

殿も私も、一睡もせずにお祈りしておりましたゆえ、この声を聞いてかなり安堵致しました。

「殿っ。」

「ああ、生まれたようじゃの。」

二人とも、ずっと気を張っておりましたがゆえ、自然と笑顔が綻びます。

あとは、生まれた子が、男子か、女子かということです。


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