【短編】キミと、あたし。




何で春基が怒るの?




ずっと前から好きだったこの気持ち。



あんたはあたしの何を知ってる?



「逃げてない。ちゃんと向き合ってる。それ以外にどんな方法がある?」



はっ



小馬鹿にしたように笑う春基。


「それだけ?」



口元は笑っているのに、目が 怖い。



そうやっていつもあたしを困らせる。



なんて言ったらいいか分からなくなる位に、『逃げるな』と彼の目が言う。



「お前は忘れようとなんかしてない。


本当は忘れたくないんだ。

だから何もしない」



「それは…ッ」



言い返せない。



だって当たってるもの。



あたしはテツを好きだという気持ちを忘れたくない。




こんなにも苦しくなるような恋愛だったけれど



大事に大事に育ててきた、大切な気持ちなの。



忘れてしまうのは、自分のそんな気持ちまで否定しているように感じたんだ。






< 33 / 49 >

この作品をシェア

pagetop