【短編】キミと、あたし。
何で春基が怒るの?
ずっと前から好きだったこの気持ち。
あんたはあたしの何を知ってる?
「逃げてない。ちゃんと向き合ってる。それ以外にどんな方法がある?」
はっ
小馬鹿にしたように笑う春基。
「それだけ?」
口元は笑っているのに、目が 怖い。
そうやっていつもあたしを困らせる。
なんて言ったらいいか分からなくなる位に、『逃げるな』と彼の目が言う。
「お前は忘れようとなんかしてない。
本当は忘れたくないんだ。
だから何もしない」
「それは…ッ」
言い返せない。
だって当たってるもの。
あたしはテツを好きだという気持ちを忘れたくない。
こんなにも苦しくなるような恋愛だったけれど
大事に大事に育ててきた、大切な気持ちなの。
忘れてしまうのは、自分のそんな気持ちまで否定しているように感じたんだ。