天然なあたしは悪MANに恋をする
「だって凄かったじゃないっすか。青族の暴れっぷりを聞きつけて、赤族も加わっちゃって。すげえ、大喧嘩になっちまって」

あたしの隣に座っている黄色いシャツの男性が鼻息を荒くして語っていた

「もう少しで、赤の族長の座も奪えそうだったのに…残念でしたっすよね」

男性の悔しそうな言葉に、先輩の視線があたしに向いた

何か言いたそうな表情でじっとあたしを見てから、男性に目を戻した

「赤のチョーには、勝てなかったさ。すげえ、怒ってたし……あいつ」

意味ありげな笑みを浮かべて、立宮先輩が口元を引き上げた

あいつ? って、赤族の『チョー』っていう人は、立宮先輩の知り合いなのかな?

「ああ、怒ってましたよね。なんで景さんの顔を見るなり、あんなに怒ったんすか?」

「さあね」

含み笑いをあたしに向けると、立宮先輩が席を立った

「瑞那、行こう。俺の部屋で、ゆっくり過ごそうぜ」

「え? あ、はい」

あたしは箸をテーブルに置くと、立ちあがった

先輩があたしの手を握ってきてくれる

指と指を互いに絡め合わせると、長い廊下を肩を並ばせて歩いた

「今夜は泊っていけよ。帰るの…つらいだろ」

「あ…はい」

「大丈夫だよ。寝室は別に用意させるから…一人でゆっくりと休めよ」

「あ、ありがとうございます」

あたしはぺこっと頭を下げた

どうして、先輩はあたしに優しいのだろう?

誰かに優しく接してもらうのって、心地が良いものだね

初めて知ったよ

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