約束
「可愛い。これくらいならいいかもね」

 そう口にして我に返る。

 私がほしいものだけど、私が買ってもらうわけじゃない。

 だから、できるだけ無難なものを探そうとする。砂時計や、木製の概観に金色の針をあしらった時計なども置いてあった。その中で、目についたのがランチョマットとマグカップのセットだった。

 白と青のチェックのクロスの上に並べられたマグカップだ。筆のようなタッチで描かれたクマが印刷されていた。

「これかな」

「そっか。クマが好きなんだね」

 彼と顔を合わせると笑っていた。

「みたいだね」

「もう少し考えてみるよ」

「それがいいよ。またつきあうから」

 彼はさっき、私が選んだマスコットを私に見せる。

「買わないんじゃないの?」

「これは君に。引越し前に買い物につきあってくれたときのお礼もしてなかったし」

「ありがとう」

 悪いという気持ちがあったけど、素直に好意を受け取ることにした。

 レジで会計をすませるとリボンをあしらってあるつつみを渡してくれた。ラッピングも頼んでくれたんだろう。

「ありがとう」

 そのとき、彼が笑ってくれたのがすごく嬉しくてくすぐったい。

 彼から初のプレゼントをもらい、天気も快晴で、姉からもらった可愛い服を着て、イメージとしては彼と楽しいデートを楽しむつもりだった。

 だが、映画館に近づくに連れて、その足の痛みが疼くようなものに変わってきた。同じ経験を高校に入った頃にした事がある。要は慣れない靴を履いて靴擦れをしてしまったのだ。

「大丈夫? 歩きにくそうだけど」

「大丈夫だよ」
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