約束
「これ、由佳に似合いそう」

 ピンクの色は顔を映えさせる。少し地味な顔立ちの私にはそういう色がよく似合うと昔からよく言われていた。

「木原君の好きな色は白と青らしいよ。がんばってね」

 白は太って見えるし、青はどうなんだろう。原色に近くなかったら着れるかもしれない。


 晴実はそんなことを考えている私を見て笑っていた。


 私がケーキを食べ終わると、晴実は作戦会議と称して私を部屋まで連れていく。


「部屋も隣なんだね」

「もう一つの隣はお母さんの部屋だからね。その辺りは仕方ないと思うよ」

 残った一つの空き部屋は一階だ。おばあちゃんが住む予定だったんじゃないかと思う部屋で、今は物置と化している。


 考えれば考えるほど、今の状態が嘘みたいな気がしている。ちなみにベランダはつながっており、いつでも行き来できる。

 ベランダに出て夜風を当たるのも好きだったが、これからはベランダにもなかなか出られなくなりそうだ。

「まずは話せるようにならないとね。仲良くなるより先にさ」
「少しならできるよ」

 本当に少しだけだけど。あまりはなしをすると、心臓がおかしくなってしまいそうだからだ。

「由佳がどうなっているかは想像出来るよ。本人に聞いたけど、彼女もいないらしいし、気長にがんばればいいよ」

「そんなことを聞いたの?」

「朝、ちょっとね」
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