約束
木原君の部屋がどうなっているのか見たい。

 行儀が悪いと思っても、誘惑にはかてなかった。どんな部屋だと分かっているのに、覗き見たくなるなんてある意味重症だ。

 私は通りすがりを装い少しだけと言い聞かせてちらっと見る。

 机の上にはパソコンやら本やら学校のテキストなんかも置いてあり、女の子の部屋とはどこか違う。一言で言えば味気ない部屋。

木原君の本当の部屋ってどんな感じなんだろう。あまり飾るイメージはないので、今の部屋は私のイメージとは違わない。

「田崎さん?」

 後ろから声をかけられ、思わず肩を震わせ振り返る。そこには不思議そうな顔をした木原君の姿があった。

「何か用だった?」

 私はその場に固まってしまった。

 部屋を見たかったなんて言われたら、変な人だと思うし、下手すると気持ちに気付かれる可能性もある。

「勝手にのぞいてごめんなさい」

「いいよ。別に。ドアを開けっ放しにしていたの俺だし」

 木原君は笑顔でそう答えたが、唐突に会話が途切れる。

「じゃあね」

 やっぱり話すなんて無理だ。

 私は自分の部屋に戻ると、緊張がほぐれ、息を吐いた。
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