約束
 夜ご飯は木原君が加わったためか、いつもより豪華だった。いつもは四品くらいのメニューが今日は七品くらいある。

「由佳、お皿並べて」

 私は母親に呼ばれ、流し台のところまで行く。

 姉と木原君は何かを親しげに話をしていたので、気遣ったんだろう。

 何を話しているのか気になったが、二人の会話は私のところに届かない。


 お皿を並べ終わると、姉は自分のコップとり、椅子が一つしかない席に置いた。その席は木原君が座ると思っていた席なのに。

だが、彼女は私の戸惑いを気にした様子もなく、そこに座ると置いてあった缶ビールに手を伸ばしていた。


 残った席は向かい合った席が四つ。お父さんとお母さんは外食に行く時も隣に座るので、私とお母さんが隣に座るということは考えられない。

ということは私と木原君が隣に座ることになる。

 そんなんじゃご飯なんて食べた気がしない。

 姉がにやっと私を見て笑う。

 分かったうえでやっているんだ。

「私がそこに座るよ」

 姉はビールを飲み始め、「自分の席に座りなさい」と私の背中を押す。

「木原君は由佳の隣に座ってね」

 私に抵抗する隙も与えずに、私と木原君の席が決まった。

 お父さんやお母さんもやってきて食事が始まる。

 話をしているときさえも心臓が自分のものでなくなったみたいにドキドキしてきてしまうのに、隣でごはんを食べるなどありえない。
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