約束
「悪い」

 家を出た木原君の第一声だった。

 今日は快晴で、辺りは明るい光が降り注ぐ。

 私は首を横に振る。非があるのは私だった。自分のことしか考えていなかったから。

「私こそ、気が利かなくてごめんね」

 今日、やっと普通に話せた言葉。思いのほか、すっと喉から出てきたことに胸をなでおろす。

「そんなことないよ」

 彼の言葉を素直に受け入れる。それだけで心のおくがほっと温かくなるような気がした。

「でも、木原君って朝弱くないよね」

「人の家だと思うと緊張してしまって、早く起きたんだ」

 そう困ったように言う木原君に少しだけ笑ってしまった。昨日、遅くまで起きていたのに、いつ眠ったんだろう。
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