約束
「朝起きたら君のお父さんは家にいなかったみたいだけど、朝早いの?」

「たまに仕事が忙しいときは早めに家を出ることがあるの。女ばかりで疲れた?」

「少し」

 木原君は苦笑いを浮かべていた。

「でも私の家はお父さんもあんな感じだから、いてもいなくてもあまり変わらないかも」

 だが、彼と並んで歩く度胸はなく、人が一人通れるほどの距離を開けて歩いていた。


もっと距離を詰めたいという願望がなかったわけではない。


でも、今はこれが精一杯の勇気だった。恋人としてはありえないけど、友達としてならもしかしたらと期待しそうになる。
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