裏腹

電車

走る、走る、走る…。



擦れ違った瞬間、赤い花びらと白い欠片が散った。


けたたましい高音、耳を狂わせる低音。


恐怖する叫び声。


目の前で散ったのは美しかった白い花。


目の前に広がるのは美しい赤い蒸気と腐臭。



あぁ、悲しみの中に美しさを見出して狂い咲いていったのだ彼女は。



静かに蒸気に指を伸ばし、ゆっくりと踏切を渡る。




花になった彼女に感謝と憐れみを込めて祈ろう。



周りの騒音など気にしてはならない。



コレは芸術なのだ。




敬意を表し、その後家路についた。





赤い花は美しく、白い欠片は可憐だった。



欠片の一部は僕の中にある。


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