ノラネーコだんしゃく
だんしゃくはやっぱりそこから消えていて、後に残ったのは、引っかききずやらたんこぶをいっぱいこしらえた、情けない面ぞろえの男たちと、ゆでだこみたいな顔してプンスカ怒っている市長だったのさ。

だんしゃくはどこへ行ったんだ?みんなが辺りを見回した。
「あそこに!」と、だれかが叫んだ。
みんながそちらをいっせいに見た。

だんしゃくは、広場の出口にある、うんがにかかった橋の手すりの上にいた。

そのとなりに、小さな男の子が座っていて、しゃぼん玉をふいていた。片手に風船をもっていた。

だんしゃくはこちらに背を向けていたんで様子はよく分からない。だけど、なんだかそのしゃぼん玉を、しずかにじっとながめているふうに見えた。

だんしゃくがそんなふうにおぎょうぎよく座っているなんて、なんだかふしぎな光景で、みんなぽかんとして、しばらくながめていたんだ。

その時だった。

あっ!と言うひまもなかった。

どこかから石がひゅん!と飛んできて、だんしゃくの頭に命中したんだ。

だれが投げたのか分からない。けっこう大きな石だった。

当たったしゅんかん、「ごちん」と音が聞こえたような気がする。石は橋の上に転がった。

男の子はびっくりして、ふうせんをもっていた手をはなした。ふうせんは音もたてずに上に上っていった。

だんしゃくは、ゆっくりとふり向くと、じろり、とにらみつけた。あたまから、たらりと血がながれていた。

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