ノラネーコだんしゃく
びっくりしたおエライさんと奥様が部屋の中をよく見回すと、なんとそこには、町中ののらネコたちが大集合していたんだ。

まあ、想像してみなよ。シロからクロからブチからトラ、太っちょからやせっぽち、よぼよぼネコから生まれたてほやほやの赤ちゃんネコまで、ありとあらゆる種類ののらネコが、ソファの上、ソファの下、テーブルの上、テーブルの下、ピアノの上、ピアノの下、ピアノの中、花びんの中、ギリシャ婦人の上、バスタブの中、カーテンの下、カーテンの上、カーテンの真ん中、クローゼットの上、クローゼットの中、ベッドの上、ベッドの中、ベッドの下で、思い思いの格好で、くつろいだり、じゃれあったり、つめといだりしてたのさ。どうも、この日はのらネコ界もパーティーだったらしい。

おエライさんと奥様はたいそうおどろかれた。いや、もうおどろいたなんてもんじゃなく、文字通り腰を抜かして、床にしりもちをついてしまった。そして、一緒にいたポーターに、あわてて叫んだ、一オクターブひっくり返った声で―

「き、きみ!ニャンだね、これは!」

そのポーター、おエライさんの「ニャン」発言につられて、思わずこう答えた。

「はい!ニャンです!」

ここで止めておけば良かったのに、おエライさん、自分のいげんをなんとか保とうと思っちゃったんだな。それで、こわい顔して、こう付け加えてしまったのさ。

「一刻も早く、ニャンとかしなちゃい!」

この町の人たちは、この話が一番のお気に入りなのさ。実はみんな、いばりんぼうのおエライさんのことを、よく思ってなかったからね。
ところが、この話はこれで済まなかったのさ。

おエライさんはえらく腹をたてて(そりゃそうだ)、予定していた駅の建てかえ工事の計画を、中止してしまったんだ。

おエライさんは、計画再開の条件を一つだけ出した―そう。それが、「ノラネーコだんしゃくをつかまえろ!」だったのさ。

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