i want,

「いいけど…材料あるん?」
「あるじゃろ。一番簡単に作れる料理の材料が、うちにないわけないわぁ」

意味は敢えて聞かなかった。夏休み、何度かみんなでヒカルの家に行って気付いた。おばさんは、あんまりヒカルのために料理をしていないみたいだった。だからあたしがたまに作ってた。結果、ヒカルを餌付けてしまった。

ヒカルの髪は少し茶色くなった。あたしよりもずっと落ち着いた色。でもあたしよりも、ずっと目立ってる気がした。

その大人びた色は、ヒカルに一寸の狂いもなくぴったりだったから。

「あっちぃのぅ」

ヒカルの声が、あたしをすり抜けて、夏の終わりの校舎に響く。

野球部の掛け声が、初めて耳障りだと思った。













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