i want,
……………
田口の家は、田口のイメージとはかけはなれた雰囲気だった。
白を基調とされた壁や、庭に続くアーチ。うさぎの置物や花瓶に咲く花は、どこかおとぎ話の国の様。
「母親の趣味だから」
テーブルの上に置かれたカップも、これまた可愛い花柄のもの。殺風景な田口の部屋とは、やっぱりかけはなれている。
「…どうも」
田口が淹れてくれたコーヒーは、思いの外美味しかった。芯まで冷えた体に温かい。
テーブルを挟んだ向かい側に、田口は座った。自分は花柄のカップではなく、シンプルな黒いカップを手にしている。多分この花柄カップはお客さん用なんだろう。
コーヒーを飲みながら、田口を盗み見た。片膝を立て、横を向いて座っている。
小学生の頃から整っていた顔は、思ったよりも大人びていた。見慣れないブレザーの制服が、大人っぽさを増長させる。
不思議な気分だった。
あんなに嫌いだった田口と、こうやって一緒にコーヒーを飲んでいるなんて。
田口がヒカルの親戚じゃなかったらあり得なかっただろう。
「…留守って、どういうこと?」
話を切り出したのは、あたしだった。
別に世間話をしに来たわけじゃないのだ。