i want,
「…ほんとはあたし、もいっこ名前あるんだ」
照れ隠しも入って、あたしは唐突に話し出した。
「え?」
「これ」
ヒカルが書いた『あおい』の隣に、あたしは自分の指でそれを書く。ヒカルの視線が追った。
「…『葵』?」
「そう、『葵』」
自分が書いた『葵』という文字を眺めながら、あたしは続けた。
「あたしの名前決めたの、おじいちゃんなんよ。女の子やったら『葵』にするって。でも、占いやら何やらで、名字とあんまあっちょらんって言われたらしいんよね」
あたしは別に気にしなかったのに、名前をつける側はそういうものがやっぱり気になったのだろう。
両親は必死に考えたらしい。
「で、結局ついた名前が平仮名の『あおい』」
「別の名前にするって考えはなかったん?」
「うん。おじいちゃん、あたしが生まれる前に亡くなっちゃったから。どうしても…おじいちゃんがつけた名前、つけたかったんじゃって」
おじいちゃんには写真でしか会ったことがない。
でもおじいちゃんは、あたしを思って『葵』と名付けてくれた。あたしの名前には、おじいちゃんの愛がつまってる。