i want,
「…ヒカルの話?」

横目で田口があたしを見た。
でもすぐ視線を前に戻し、「あぁ」と小さく呟く。

「ヒカルの両親、正式に離婚決まったから」

ドクンと心臓が跳ねた。
いくら子どもでも、『離婚』という言葉の持つ重みはわかる。
眉間のしわが深くなるのがわかった。

「親権は母親になった。まぁ…アル中で借金抱えた父親に親権がおりるわけないけど」

田口の話を聞きながら、いつかすれ違ったヒカルの母親の顔を思い出す。
もやがかかったその記憶に、どうしてもヒカルの幸せが見えなかった。

「…ヒカルは、どうしてるん?」

自分でも驚く程小さな声で、あたしは訊いた。
ヒカルの気持ちを考えると、胸が詰まって仕方なかったから。

「…家にはほとんど帰ってない。多分、先輩の家とか渡り歩いてるんじゃないかな。遊び回ってるってより…ただ、放浪してる感じ」

淡々と田口の口から発せられる真実は、予想していないものではなかった。
それでも何か、ぐらりと中心が揺れる。

「…大丈夫なん?」
「さぁ…。ヒカルはいつも、不安定だから」
「不安定?」

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