i want,
二人、黙って並ぶ。
顔を上げることのできないまま、あたしは視線をヒカルの爪先に向けていた。

履き潰した踵は、小学生の頃と変わらない。
でも大きさが、時の流れを教えていた。

そんなヒカルの爪先が、少しだけ動く。

あたしの方を、向く。


「告られたんじゃって?」


思わず視線を上げた。
ヒカルのそれとぶつかり、容赦なく心臓が跳ねる。

目を泳がせてしまったあたしに、「秀則にじゃ」とヒカルが付け加えた。

戸惑ったのは、質問された内容のせいじゃないのに。

「…うん、」

小さく答える。
あの日の雪はまだ、あたしの脳裏に鮮明に残っている。

「ほうけ、」

ヒカルも呟き、体の向きを変えた。手すりに腕を乗せ、空を見上げる。

その横顔は、小さく笑っている様だった。

「…知ってたん?」
「何を」
「田口の…気持ち」

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