i want,


……………

下駄箱から校門へと続く道を歩きながら、いつかもこんなことがあった気がすると思った。

あれは確か雪が降っていた季節。ヒカルとの終わりを、予感し始めた頃。

あの頃の雪は桜へと変わり、予感は現実へと変わった。

なのに今、同じ様に彼へと向かっている。
彼の名前を呼ぶのも、随分久しぶりだった。


「田口」


校門にもたれかかっていた田口は、あたしの呼び声で顔を上げた。あたしを見つけて、小さく笑う。

「出てくるの遅いよ」
「だって、田口がいるなんて考えてもなかったし。連絡してくれたら早く出てきたのに」
「矢槙携帯持ってないじゃん」

「そうじゃけど」、そんなやり取りをしながら、田口と普通に話せている自分に驚いた。

田口と会うのは、田口に気持ちを告げられて以来だ。
次に会う時は気まずいと思っていたが、そんなことは微塵もなかった。

それは多分、きちんと終わらせることができているから。

田口の中でも、あたしの中でも。

「今日は、これ渡しに来たんだ」

そう言って田口は、鞄の中から白い紙を取り出した。
四つ折にされているそれは、お世辞にも綺麗な紙とは言えない。
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