i want,
「何?」
くたびれているそれを渡されて、あたしは怪訝な表情を見せる。
そんなあたしに、田口は真面目な声で告げた。
「ヒカルから」
…息が、止まるかと思った。
久しぶりに誰かの声でヒカルの名前を聞いて、胸が締め付けられたかの様に苦しい。
ただの紙が、一瞬で重みを増した。
「ちょっと前に、ヒカルから預かったんだ。卒業式の日に、矢槙に渡してくれって」
「…そうなん」
何を言えばいいのかわからずに、あたしはただ小さく呟いた。手にした紙から意識をはがすことができない。
ヒカルから。
ヒカルからあたしに発信された、何か。
この紙で繋がっている気がして、一瞬泣きそうになった。
「それ渡しに来ただけだから」
「じゃあね」、そう言って田口は背中を見せる。
あたしはそこでようやく紙から視線を上げて、「田口、」と呼んだ。
「…ありがとう」
どこからか聞こえた女の子達の笑い声にかき消された気がしたが、振り向いて少しだけ笑った田口を見て、ちゃんと届いていることがわかる。
あたしも小さく笑い返して、視線を紙へと戻した。