i want,
俺はずっと、ヒカルにとって母親は、単なる『母親』というカテゴリに分類される人間でしかないと考えていた。

例えば先生が『先生』であるかの様に。それ以上もそれ以下もないと。

でも今その一言を聞いて、それは思い違いだったことに気付かされる。

ヒカルにとっての母親は、切ろうとして切れる様なものではないのだ。

ヒカルから手離すことは、できないのだ。

「…矢槙は?」

でも、だったらヒカルは。


「矢槙のことは、いいの?」


本当は手離したくない人を、手離さなければいけなかったんじゃないのか。

本当は一番、側にいたい人を。


その視線だけを俺の方に向け、ヒカルは小さく笑って言った。

「言ったが。あおとは別れた。もう何も関係ないわ」
「でも、ヒカルは…」
「関係ない方がえぇんじゃ。俺とあおは、違う」

俺の言葉を遮って、ヒカルははっきりと告げた。

「あおは…バカみたいに素直で、真っ直ぐじゃ。俺とは違って、いい意味で普通じゃ。もし俺とずっと一緒におったら…あおが、汚れる。そんな気がしちょった」

< 319 / 437 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop