i want,
そこでようやく、電話の向こうの様子がおかしいことに気付いた。
いつもバカみたいにテンションの高い卓也の声が、電話越しにでもわかる程沈んでいる。
あたしは眉間にしわを寄せ、携帯を持ち直した。
「卓也?何、どうしたん?」
「…あお…」
卓也の声が、揺れる。
胸に嫌なざわめきを抱える。
「何かあった?」、そう、聞こうとした。
その瞬間、涙声の卓也が呟いたんだ。
左耳から入ってくるX'masソングに、かき消されそうな声で。
「…神ちゃんが、死んじゃったって」
…かき消されてしまった方が、よかった。
街の色がモノクロになる。
卓也の声に被さる様に、明るいX'masソングが響いた。
それしか、聞こえなかった。