i want,


……………

式にはさとも参加した。

綾が抱いた、さとの遺影。
卒業アルバムの写真なんかじゃなく、普段の何気ないさとの笑顔。

全体写真でさとも一緒に写れたことだけが、嬉しかった。



成人式が終わると、中学の仲間だけでさとの家に集まった。

おばさんは快くあたし達を受け入れてくれた。
「覚もみんなと一緒に成人できた」、と。

さとの写真を囲み、みんなで成人できたことを喜ぶ。

本当にさとが側にいるような、そんな気が、した。



…「あお」

部屋の隅で飲んでいたら、綾が隣に腰かけた。

片手にはビール。お酒も飲める様になったことに、安心する。

「にぎやかやね」
「うん。神ちゃんにぎやかなん好きやったけぇ、喜んでるよ」

さとの葬儀では泣き崩れていた卓也も、今はお酒を片手にゲラゲラと笑っている。

右腕は常にさとの遺影を抱いていて、それがなんだか嬉しかった。

さともみんなと一緒にいると、思えた。

「ありがとね、あお」

不意に綾は言って、ビールを床に置いた。

騒いでいるみんなに目を向け、綾は優しく微笑む。

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