i want,
「知って…?」
「や、聞いたわけじゃないんじゃけど、なんとなく…」
「…そっか」
みどと垣枝は、あれからほとんど話していなかった。
違和感があるわけではなかったけど、真依が感付くのも無理はない。
「垣が、好きなん?」
自然に真依が言った。
あたしはそんな真依の顔を見て、そしてゆっくり視線を落とす。
「…わからん」
わからない。
あの神楽の夜、確かにあたしの中の何かが変わった。
あの息が詰まるような衝撃、欲求。
その感情の名前を、あたしは知らない。
これが『好き』という感情なのだろうか。
みどが垣枝を想う気持ちと同じなのだろうか。
…違う気がした。
あの感情を、あたしはのんきに『恋』だなんて思えない。
あたしの中に渦巻く衝動。
あの正体は、一体何?