i want,
ははっと笑い、垣枝はあたしの髪をすくった。
潮で少しベタついてる。
髪の毛からあたしの目に視線を移し、そしてそっと笑った。
「ええよ。ずっと友達でおっちゃるわぁ。…安心しぃ」
…ふっと気持ちが緩んだ時には、もうどうしようもなくなってた。
馬鹿みたいにポロポロ涙が零れる。
同時に溢れてるのは、神楽の時に知った感情。
…欲しい。
あたし、垣枝が欲しい。
この視線を、他の誰にも譲りたくない。
あたしだけを見てて欲しい。
「帰るかぁ」
今度はあたしも、コクンと頷いた。
それを確認して、垣枝は歩き始める。
左手で涙を拭って、あたしもその背中を追いかけた。
パーカーを掴んでた右手は、気付いたら垣枝の左手に握られていた。