i want,


…どっかで考えてた。


もし今あたしが、垣枝から離れたら。

垣枝から離れて、あの神楽の夜も何もかも全て忘れて、あの衝動にも欲求にも全て蓋をして。

そうしたら、今まで通りになるんじゃないかって。

皆の笑顔の中に、普通に入れるんじゃないかって。


…でも、どうしてもできなかった。

それだけはどうしても、無理だった。


沸き上がってくる感情の殺し方を、あたしは知らない。



「…ええよ」


あたしを振り払うことなく、垣枝が呟いた。

「友達でええんけ?」
「それ以外何があるんよ」
「彼氏とか?」
「何言いよんよ、ばっかじゃない?」

ずっと鼻をすする。
泣きそうになってることを誤魔化すために、わざと強気に言った。

「垣枝、好きな人おらんって言いよったじゃ」
「そうじゃったの」
「彼氏とか彼女は、好きな人となるもんじゃろ」
「そうじゃなぁ」
「もう、真面目に聞いちょる!?」
「聞いちょる聞いちょる」

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