【完】最期の嘘
汐のこの優しい笑顔を何度思い描いただろう。


汐が自分と笑い合うことを何度望んだだろう。



優太は無意識に、テーブルに乗っていた汐の左手に、自分の右手を重ねた。



「優太さん?」



首を傾げる汐の左手を自分の方に引き寄せ、優太は汐の薬指に口づけをした。



「もう君を離さない。汐ちゃんの薬指、俺に予約入れさせて…って我ながらキザだ。」



衝動的にした自分の行動に、優太は恥ずかしそうに頭を掻いた。



そんな優太の行動に、汐は泣きそうな顔で笑う。



汐と優太の間にあった嘘という名の暗闇は、沢山の人間の優しい嘘によって、取り除かれたのかもしれない。
< 213 / 230 >

この作品をシェア

pagetop