365回の軌跡
「ぇ~~~!!」
私はお風呂上がりに缶酎ハイを片手に悲鳴を上げる。
「無理だよ、そんなの…」
私は電話を持ち直す。
「頼むよ。もう五年も経ってるし」
電話の相手は母だった。今週末に父が東京にいる知り合いの法事に出席する。時間も遅いので、私の家に父を一晩泊めてほしいと言うのだ。
「お父さんもよろしくって言ってるから。お願いね」
「う~ん…しようがないなぁ」
私は頭をボリボリ掻く。先週ショートにしたばかりだ。
「助かるわ!お父さん夜の7時くらいに沙紀の家の最寄り駅まで行くから迎えに行ってあげて。よろしく!」
母は一方的に言うと電話を切った。
私は溜め息をつき、缶酎ハイを啜る。父は苦手だ。昔から無口で体は大きくてゴツい。参観日の時なんかは友人に怖い人と勘違いされる。お洒落なんか無縁だし、酒も良く飲むし、いびきもうるさい。
私は更に溜め息をつくと、部屋を見渡し片付けなきゃな…と思うのだった。
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