365回の軌跡

駅はまだ平日の朝だけあって通勤ラッシュでごった返していた。私は父の乗る方面の入場券を買い、急いでホームまで出る。
父が…スーツ姿でちょうど開いた電車のドアに入る所だった。
私は周りも気にせず、大声で叫んだ。
「お父さん！！」
父は驚いた顔で振り返る。私は知らない内に目に溢れるほどの涙を浮かべていた。
「お父さん…ありがと…」
私は涙声でそれだけ言う。声が届いたか…分からない。でも伝わったよね。親子だもん。
父はしばらく立っていたが、何も言わず電車に乗り込み、ドアが閉まる直前、眉間にシワを寄せ、厳しい顔で私に怒鳴った。
「やれるだけやって来い！」
ドアが閉まり、父を乗せた電車が音を立て走り出した。