ロ包 ロ孝
 説明を受けて大体の内容も解ったし、捜査資料も受け取った。今日は一旦仕切り直し、作戦を練ってからまた来よう。

「でも今日は北田さん。説明が出来ずにストレスが溜まっちゃったんじゃないスかねっ」

 本来北田が喋る所を全て古内警部補が話してしまったので、熊チャンの出る幕は始めだけだった。

それより俺は、満面の笑みで話題を切り出す栗原を見やりながら「こいつはまだ20代なんだもんなぁ」などと、話と全く関係のない事を考えていた。

「それであの毛むくじゃらのまぁるい拳を膝に乗せて、ずぅ〜っと貧乏揺すりしてましたよ、ははは。あれ、坂本さん?」

「悪い悪い。ちょっと作戦を考えてたんだ」

 俺が35で栗原は27、栗原が30になったらすぐ俺は40に手が届くのか。40と言えば折り返しだ。後は終焉に向けてまっしぐらか……。

「……死にたくないな……」

 思わず口を突いて出てしまった言葉に、自分自身が一番驚いた。

「え? 今回の案件ってそんなに危険なんすか?」

 おとなしくしていた里美が口を開く。

「少し悲哀を感じちゃったのよねぇ、栗原くんの若さに」

 なんだよ、また見透かされてたのか。やっぱりこいつには適わないな。

「ま、そういう事だ。たまにはそんな時も有るさ。また明日ヴァシーラでな!」

 ヴァシーラはいつも俺達が行っているカラオケ屋だ。看板には『柱』とも書かれているから語感を掛けてあるのだろう。作戦の柱もここで構築されていく。裏蠢声操躯法も絡めての会議となると、いつ盗聴されるとも限らない音力内で行なうのは心許ない。

その心配をする必要の無いここが、今ではすっかり俺達の作戦会議室になっていた。


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