ロ包 ロ孝
 ここは以前にも犯行が有った場所だ。ラブホテル街の更に裏を通る小路になっていて、暗い上に滅多に人も通らない。

賊は安心しきっているのか声も潜めずに切り出した。

「おら、解ってんだろ? 出すもん出せよ!」

 こういうケースの場合、大抵はその恫喝に負けて素直に金品を出してしまう。栗原が身を乗り出して構えるとしかし、サラリーマン風の男達は答えた。

「おま、お前、お前ら! 最近騒がれてるノックアウト強盗だな?」

「それがどうした。痛ぇ目見てぇのか!」

「お前らなんかはな。『海袋エンジェルス』が只じゃおかないぞ?」

 ようやく一般の人にも俺達の名前が知れて来たようだ。精力的に活動してきた甲斐が有った。しかし賊は高笑いして言う。

「ハァッハハハァ〜、こりゃ面白れぇ。てめえらはあんな使えねぇ奴らを頼りにしてんのか! あり得ねぇ〜」

 くっそぉ、使えないだとっ?

栗原は固く拳を握り締め、今にも飛び出して行きたい衝動を必死に抑えていた。

「電話で里美……山岸さんに連絡して来てくれますか?」

「解りました」

 そうしている間も賊は続ける。

「あいつら、善人面して事故処理なんかしてっから、俺らが裏でいいように姉ちゃんを弄んでたのに気付かなかったんだぞ?
 ははっ、あの女いい乳してたよなぁ?」

「おお、バッグも高く売れたしな」

 へらへらと相槌を打つ賊を見て、栗原は怒りを抑える事が出来なかった。メンバーに退路を断つよう指示すると、身を潜めていたゴミ箱の陰から立ち上がり、そして叫んだ。

「こらぁっ、貴様ら何やってんらぁっ!」

 しっかり寝た筈なのに、まだ舌の動きに問題が有るようだ。


< 194 / 403 >

この作品をシェア

pagetop