ロ包 ロ孝
 賊確保の報告も兼ねて北田に連絡し、舘野さんの旧姓について調べるよう頼んだが、意外にあっさりと答えは出た。

伊賀三大上忍の一派である百地家の流れを汲む、百田という家系だという。

忍者というより策略家であり、軍事参謀として名を馳せた服部半蔵とは違って、生粋の『しのび』であった百地丹波の血を引く彼女も、俺のように『一子相伝の秘術』を受け継いだのだろうか……。


∴◇∴◇∴◇∴


「残った賊の仲間が何かをやらかすかも知れないし、今夜は予定通りに巡回を継続しましょう」

「はい! 油断は大敵ですからね」

「よっしゃあっ、気合い入れるぞ?」

「おぃっす!」「おおっ!」

 このように、みんなが賊確保の喜びで沸き返っている時こそ、相手に取っては絶好のチャンスなのだ。2度と同じ轍(テツ)は踏まない。


───────


 かくして賊確保の噂は商店街中を駆け巡り、真夜中だと言うのにお礼の品物や金一封を持って事務所を訪れる人が絶えなかった。

「いやホントに、これは頂けませんよ」

「いいからいいから、ナニほんの煙草銭だからさ」

 多分中身はそんな千円単位の額ではないだろう。しかし受け取らなくては帰って貰えなさそうな雰囲気なので、有り難く頂戴する事にした。

「お心遣い有り難うございます」

「こちらこそ、どうも有り難う。心から感謝してるよ! ご苦労様」

 事務所に居ても来客の応対でちっとも身体は休まらなかったが、そんなねぎらいの言葉が何より俺達を癒してくれていた。

「これ、ここでいいですか?」

 でかでかと『祝事件解決』と書いた花輪が届く。ここ迄大袈裟にして貰わなくてもいいのだが……。


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