ロ包 ロ孝
「爺ちゃん! 聞いたぞ聞いたぞ? 俺が知らない内に、随分色々と音力の内情が様変わりしてるじゃないか!」

 三浦と別れた後に俺は、取るものも取り敢えず高倉家へ電話を掛けていた。ここの所は祖父と話す事も滅多に無かったのだが……舘野さんの話は知らないとしても、再修練の情報はこちらに流して当たり前ではないのか?

『なんじゃなんじゃぁ? こんな夜遅くにそんな勢い込んで。
 一体何を知りたいんじゃ、淳よ』

 祖父は寝ている所を起こされたのか、かなり当惑しているようだが、こっちも憤りが収まらない。

「再修練の話だよ。素質が無いとされた人にボイストレーニングを施して、その後新たに修練し直してるって話さ!」

『おお! どこから聞いたんじゃ。でも、それを淳に教えなければいけなかったのか?』

 どうも祖父には緊張感がなさ過ぎて困る。音力には常に疑いの目を持って接して行かねばならないと、何度も念を押して言った筈なのに!

「最近再修練の末に免許皆伝に至った三浦って男は、俺の会社の部下だったんだよ。
 その彼から聞かなかったら、また俺は蚊帳の外なんだぞ?」

 音力の真意を探る為にも、僅かな動きさえ把握しておきたいのが現状だ。再修練のような大事を何故報告しないんだ!

『おお、あの三浦さんな。彼は凄いぞ? 今の再修練という体制を作った先駆けじゃからの!』

 だからそういう動きが有るという事を、情報として提供して貰いたいのだ!

『しかしな、淳。ボイストレーナーの冴子さんは中々の上玉じゃぞ? ムフォッフォッフォッ』

 そんな下らない情報はどうでもいい!

音力内部へ密偵を送り込む計画が閃いたのも、この頼りない祖父の所為だった。


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