ロ包 ロ孝
「そうだった、根岸さん。三浦のチームの事なんですが……」

 俺は根岸に感付かれないように話をすり替える。そもそも元の用事はそれだったのだから。

三浦のチームが充分実力を付けている事を伝え『新派』の微妙な感情についても説明した。加えて俺達や過去の上位術者に対抗意識を燃やしていて、ともすれば無理をして凡ミスを招き兼ねない事も伝えた。

「なるほど。つまりは単独で案件に当たらせた方が好ましいという事なのですね?
 それはちっとも把握出来ていませんでした。ご忠告有り難うございます」

 根岸には俺から聞いたという事を固く口止めした。人づてに伝わって、また余計な悪感情を煽る事にもなり兼ねないからだ。

三浦の問題解決能力を見限った訳ではないが、俺達がオペレーション中にミスをすれば、『死』に繋がる事も有る。先手を打っておくに越した事はない。


∴◇∴◇∴◇∴


「なぁんだ。そういう事だったんすか。やっと意味が解りましたよ」

 『ヴァシーラ』で一息つきながら、北田の台詞を振り返っていた俺に栗原が言った。

「三浦さん達『新派』の人達にも、並々ならない感情が有ったんすねぇ」

「どうせだったら根岸にも伝えようと思ったからな。ハッキリ言わなくて済まなかった」

「いやそんな、全然平気っすよ。エリートに見られてたってのも、強(アナガ)ち悪い気分じゃないし」

「全く。栗原はお調子者ねっ!」

 俺も関達にトップエージェントと言われて気分が良かった、というのは内緒にしておこう。

「いや、だからといって『新派』の人達にデカイ顔させてるのは癪っすよ?
 なんかこう、無理矢理でもいいから大きい案件が無いんすかねぇ。
 バシバシッと決めて、見せ付けちゃうんすけどネ!」

 ファイティングポーズを取り、ワンツーパンチを打ちながら栗原が言う。


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