ロ包 ロ孝
 里美はカムフラージュが好きではない。

「どうせだったらタイプD(セクシーバージョン)のスーツを持って来るんだったわ?」

 なんだと? あれは実戦向きじゃ無いし、しかもあんな格好で隣に居られたらコッチが欲情してしまう。

「まったく……重いの臭いのと、お前らと来たら文句ばっかりだな!
 身を護る為なんだから辛抱しなさい!」

「すいません、坂本さん」「……ごめんなさい。そうよね、我慢する」

 そう言うなり突然ペイントを塗り始めた里美。

「あのぉ……里美。そんな顔じゃ宿の人に怪しまれるから、外に出てからやってくれないか? それ(カムフラージュ)」

 言う事を聞いてくれるのは有り難いが、まだ気が早い。ここ最近の里美は、どんどん俺に似てきている。それだけ通じ合っている証拠なのだが、ドジな所迄似るのは勘弁して貰いたい。


───────


「私達は夜釣りに行くので、後は宜しくお願いします」

 玄関で、残務処理をしている番頭と居合わせた。俺は夜間の外出を怪しまれないよう、とっさに言付ける。

「沢山釣果が揚がるといいですね。行ってらっしゃいませ」


∴◇∴◇∴◇∴


 現場に程近い草むらでバトルスーツに着替えた俺達は、いよいよ賊の本拠地に侵入した。

 捨てられた椅子や机、散乱した布団や枕。そこココに暖を取る為燃やしたと思われる焚き火の跡が有る。俺達は暗視スコープに依って緑色に照らし出された室内を軽快に歩いている。

「このスコープはホント便利っすね。これが有れば、こんな足場の悪い所でも楽々進めますよ」

「栗原、もっと小さい声で喋れ!」

「……ス イ マ セ ン……」

「突入経路と脱出経路を頭に叩き込んでおけよ?」

 俺は2人に念を押して歩を進めた。


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