ロ包 ロ孝
 俺は何気ないこんな時間が好きだった。この生活がいつまでも続いて欲しいと、心から願っていた。


∴◇∴◇∴◇∴


「お久し振りです、坂本さん。いや、坂本統括ファウンダー」

 何故だか斜に構え、気障ったらしく挨拶する渡辺。

「その呼び名はやめろよ達っつぁん。それに音力は役職名で呼ばない事になってるだろ?」

 するとすっかりオチャラけた態度で金髪頭を掻いている。

「あははぁ、そうでした。どぉもすいませぇん」

「ご無沙汰しています。あの節はお骨折り頂きまして、有り難うございました」

 その渡辺を押しやって前に出た彼は、V系バンドのヴォーカルだった岡崎だ。

「もう昔の事だよ。それにしても早期発見出来て良かったよな。ちゃんと定期検診には行ってるかい?」

「遅れがちでは有りますが、自分の為ですから何とか通ってます」

 彼は修練中に声の異常を発見され、検査の結果初期の咽頭癌と診断されたものの、早期に治療出来た為に事なきを得ていた。

天性のセンスとヴォーカリストとしての経験から、休んでいた間に出来た他のメンバーからの遅れを瞬く間に縮め、今は一線級のエージェントとして気を吐いている。

「遠藤君はなんでそんなにかしこまってるんだ?」

 すぐさま渡辺が首を突っ込んでくる。

「こいつは、新派に鞍替えしたからファウンダーに顔向け出来ないと思ってるんですよ」

「本当にその節はすいませんでした」

 遠藤は忍術にも詳しいし、何よりその頭脳で新派との橋渡しに大いなる貢献をしてくれた。少し気を遣い過ぎるのが玉に瑕だが。


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